バーチャル株主総会とは?種類やメリット、開催方法とトラブル対策まで徹底解説

バーチャル株主総会とは

この章では、バーチャル株主総会についての基本的な理解を深めましょう。

株主総会の種類

2023年5月現在、株主総会には主に以下の3つの形式があります。

1. 一般的な株主総会

上場企業が物理的に存在する会場で開催し、取締役や監査役と株主が一堂に会します。

2. ハイブリッド型バーチャル株主総会

通常のリアルな株主総会に加えて、インターネットを通じて遠隔地の株主も同時に参加できる形式です。ここには出席型と参加型があり、法律上の解釈も異なります。

3. バーチャルオンリー型株主総会

リアルな会場を設けず、すべての株主がインターネットを利用して参加するタイプです。

バーチャル株主総会とは、株主がインターネットを通じて遠隔地から参加できる総会を指し、ハイブリッド型とバーチャルオンリー型の2種類があります。

バーチャル株主総会が注目される背景

最近、バーチャル株主総会が注目される理由はいくつかあります。まず、インターネット通信環境の信頼性が向上したことが挙げられます。高品質なWeb会議システムの普及により、バーチャル株主総会を開催したいというニーズが生まれています。

また、役員陣が同じ時間に集まるのは難しいため、バーチャル株主総会を実施すれば、効率よく会議を組むことができます。実際、2020年にGMOインターネットがハイブリッド型株主総会を実施した際、通常の所要時間が1時間30分から2時間のところ、37分に短縮されたとのことです。

新型コロナウイルス感染症の影響も大きな要因です。対面での会議は3密のリスクを伴うため、株主総会を延期したり来場者数を制限したりする企業が増えています。経済産業省が公開している「株主総会運営に係るQ&A」でも、出席を控えるよう呼びかけることや入場制限、症状がある株主の入場を断ることが可能とされています。

さらに、人材不足やコスト削減の観点からも、バーチャル株主総会は有効です。労働人口が減少する中、オンラインでの開催は今後ますます需要が高まるでしょう。

例えば、アメリカのいくつかの州では、すでにバーチャル株主総会が開催されており、特にデラウェア州では、株主の本人確認方法、参加方法、議決権行使に関する記録を残す条件を満たすことでバーチャル総会が認められています。

日本でも、今後は完全なバーチャルオンリー型株主総会が認められる可能性があります。そのため、現段階では実施可能なハイブリッド型バーチャル株主総会についての理解が重要です。

このように、バーチャル株主総会は株主の利便性向上や感染症対策の観点から、上場企業や非上場企業を問わず、増加しているのです。

バーチャル株主総会のメリット

バーチャル株主総会は、企業と株主の両方にとって多くの利点があります。それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

企業側のメリット

1.参加方法の多様化による株主重視の姿勢のアピール

バーチャル株主総会を開催することで、株主にとっての利便性が向上します。リアル株主総会に参加できない株主にも配慮し、参加方法を多様化することにより、企業が株主を大切にしている姿勢を示すことができます。

2. 透明性の向上

オンラインでの参加が可能になると、より多くの株主が参加できるようになります。これにより、株主が経営陣に対する監視を強化できるため、会社経営や株主総会の運営がより透明になります。この結果、コンプライアンスの強化につながるのです。

3. 感染症予防対策

現在の社会状況において、感染症対策は重要な課題です。多くの株主が集まる通常の株主総会では、感染症のリスクが高まりますが、バーチャル株主総会を導入することで、非対面での参加が可能となり、企業としての感染症予防対策が実施できます。

株主側のメリット

1. 遠方の株主も参加しやすい

バーチャル株主総会では、開催地が遠くてもオンラインで簡単に参加できます。特に、上場企業の場合は東京都に本店を置く企業が多く、地方に住んでいる株主にとっては参加が難しいことがありましたが、バーチャル株主総会によりそのハードルが低くなります。

2. 同日の株主総会に複数参加できる

上場企業の株主総会は毎年6月後半に集中して開催されるため、複数の企業の株主総会に参加するのが難しいことがあります。しかし、バーチャル株主総会を利用すれば、自宅にいながら複数の株主総会に参加できるため、時間の無駄がなく、効率的です。

バーチャル株主総会の流れ

1. 開催の決定と配信システムの導入

まず、経営陣と担当部署でバーチャル株主総会の開催を決定し、準備を進めます。この際、株主が参加するための配信システムを導入することが重要です。システムを選ぶ際は、接続の安定性や操作性、必要な機能が備わっているかを確認しましょう。

2. 招集事項の決定

バーチャル株主総会が近づくと、取締役会で以下の招集事項を決定します:
– 株主総会の日時および場所
– 目的事項(議題)
– 書面や電磁的方法による議決権行使の認可
– 通信の方法
– オンライン参加した株主の議決権行使の取り扱い

3. 招集通知の発送

招集事項を決定した後、株主に招集通知を発送します。通常、書面での発送が求められますが、株主の同意があればメールなどの電磁的方法でも可能です。公開会社の場合、開催日の2週間前、非公開会社の場合は1週間前に通知を行う必要があります。

4. バーチャル株主総会当日の準備

株主総会当日に向けて、議事進行の確認や株主からの質問に対する想定問答集の作成、配信システムのチェックなどを行います。また、当日用の問い合わせ窓口を設置することも重要です。

5. 株主総会の実施

当日は経営陣から株主への報告が行われ、その後招集通知に記載された目的事項についての審議が進められます。トラブルが発生した際は、議長が適切に議事を進行することが求められます。

6. 議事録の作成・保存

株主総会の議事については、以下の事項を含む議事録を作成しなければなりません:
– 開催日時・場所
– 議事経過の要領・結果
– 株主の発言内容の概要
– 出席した取締役や監査役の氏名
– 議長の氏名
– 議事録作成に関する職務を行った取締役の氏名

作成した議事録は、本店に10年間保存する必要があります。

バーチャル株主総会の開催における注意点

バーチャル株主総会を開催する際には、以下のポイントに留意することが重要です。

– 本人確認の実施::オンラインでの参加者に対して、本人確認の手続きを設けることが求められます。IDやパスワードを用いるほか、二段階認証などの対策も考えましょう。

– 出席と議決権行使の関係:オンライン参加の株主に対して議決権行使を認めるかどうかは、事前に明確に決めておく必要があります。

– 質問・動議の取り扱い:オンライン参加者からの質問や動議が乱発される可能性があるため、事前に質問の回数や内容を制限することを検討すると良いでしょう。

– 通信障害対策:開催中に通信障害が発生するリスクを考慮し、事前に対策を講じておくことが重要です。

バーチャル株主総会は、効率的に運営できるだけでなく、参加者にとっても利便性の高い方法です。企業はこの形式を積極的に取り入れ、株主とのコミュニケーションを深めることが期待されます。

バーチャル株主総会の取り組み

このセクションでは、バーチャル株主総会の取り組みについて、実施件数や具体的な事例を紹介します。

バーチャル株主総会の実施件数

まず、上場企業の中でどれくらいの数のバーチャル株主総会が実施されているのか、データを見てみましょう。以下は2019年から2020年にかけての実施状況です。

2019年6月
– ハイブリッド出席型:0社
– ハイブリッド参加型:5社

2020年6月
– ハイブリッド出席型:9社
– ハイブリッド参加型:113社(うち株主限定54社、一般公開59社)

*出典:経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集」*

このデータから、特にハイブリッド参加型のバーチャル株主総会を実施する企業が増えていることがわかります。企業からは「株主の出席機会を拡大できた」「株主との対話の質・量が向上した」といった声も寄せられています。

バーチャル株主総会の取り組み事例

ここでは、バーチャル株主総会の具体的な取り組み事例を紹介します。自社での開催の参考にしてください。

1. ブイキューブ × アステリア

2020年4月、ブイキューブ社とアステリア社は、新型コロナウイルスの感染予防策として、バーチャル株主総会を実施しました。この取り組みでは、株主が「報告聴講」「質問」「議決権行使」をオンラインで行えるようにしました。

準備したもの
– オンラインセミナーシステム
– 事前の会場確認
– キックオフミーティング
– 招集通知や議長シナリオの作成
– 利用規約の確認
– アンケートの設問設計

ブイキューブは、中継用のスタッフを現場に配置し、株主総会のライブ配信をサポートしました。この配信プラットフォームは、ブラウザのみで参加でき、株主は送付されたURLやQRコードを使って簡単にアクセスできます。最大で同時に2万拠点まで対応可能です。

議決権行使や質問は、ブロックチェーン技術を利用して行われ、主催者による改ざんができない仕組みが導入されています。このように、セキュリティを確保しつつ、株主のプライバシーを守ることができました。

バーチャル株主総会から得た学び

実際にバーチャル株主総会を実施した企業は、以下のようなメリットを感じています。

– 開かれた株主総会をアピールできる
– 株主の感染リスクを低減できる
– 先進的な企業イメージを醸成できる
– 遠方の株主も参加しやすくなる

一方で、デメリットとしては追加コストの発生や、株主総会の模様が二次利用される可能性があります。

また、準備としては以下のポイントが重要です。

– 会場のインフラ:専用回線の準備と予備回線の確保。
– 招集通知:通信費が株主負担になる旨や、新型コロナウイルスの影響でリアル会場が利用できない可能性の記載。
-トラブル対応:通信障害への備えや、関係部門との連絡方法を事前に確認しておくこと。

事例紹介

グリー株式会社
グリー株式会社では、2019年にハイブリッド参加型の株主総会を実施し、2020年にはハイブリッド出席型に移行しました。出席申込や事前質問を行えるポータルサイトを設置し、効率化を図りました。質疑応答や議決権行使を充実させるため、ブイキューブの配信プラットフォームを活用しました。

株式会社ワコム
株式会社ワコムでは、2020年の株主総会をオンライン参加型とリアル開催のハイブリッドで行いました。製品の操作をクローズアップして映すことで、分かりやすく説明しています。これにより、遠方の株主も参加できるようになりました。

ハイブリッド型株主総会の注意点

ここでは、ハイブリッド参加型バーチャル株主総会を開催する際の注意点について説明します。スムーズな運営のために、以下のポイントに気を付けましょう。

1. 議決権の行使ができない

参加型の場合、株主は当日の決議に参加できません。そのため、事前に書面や電子的な方法で議決権を行使する必要があります。この点をしっかりと把握しておくことが大切です。

2. 参加方法の周知

株主がバーチャルで参加するためには、IDやパスワードを招集通知と一緒に知らせるのが一般的です。参加方法を事前に株主に周知しておくことが求められます。これにより、当日スムーズに参加できるようになります。

3. コメントの受付

インターネット経由で参加する株主は、質問や動議を行うことができません。そのため、事前にコメントを受け付けておき、株主総会中にそれに対する回答を行うなどの工夫が重要です。これにより、参加感を高めることができます。

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会のために必要な環境

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会を運営するには、安定した映像や音声の配信が可能な環境が必要です。汎用的なウェブ会議システムを使用することもできますが、株主総会専用の配信プラットフォームを利用するのが望ましいです。

例えば、ブイキューブが提供する「バーチャル株主総会用配信プラットフォーム」では、次のような機能が用意されています。

– 専用ログインページ
– 議決権行使機能
– 動議受付機能
– 質問機能
– 事務局専用管理ページ

これらの機能が整っていることで、スムーズな株主総会の運営が実現できます。

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